ここでは運動指導に携わる方々に向けた運動指導のあり方についてお話しします。部活動の顧問が変わることによる子供たちの影響、その解決策、そして若年期において運動能力が低い場合の運動指導のあり方などについて経験をもとに考察したいと思います。 



個々人の可能性を引き出す指導が重要

ここで紹介する内容は私(森部先生)の講義に参加をした受講生の皆さんからいただいたアンケートや感想文、講義レポートの中から非常に重要な示唆を与えるもの選び説明していきます。

指導内容や指導方法の基盤をしっかりと持った指導を行うことが大切

中学の頃3年間で4人も顧問が変わり一人ひとり言うことが違っていたので困惑した。(野球)

野球部だった大学生男子が中学校の時を振り返った時に3年間でなんと4人も顧問が変わったということです。

そして、その顧問から野球を習う立場で一番困惑したというのは一人ひとり指導内容、指導の仕方が違っていたということです。

これは何が問題かと言うと、教える側からしたらこの野球のやり方、理論というのが俺流ということで自信を持って教えられていたかもしれません。

しかし、受ける側からしたら同じ野球をやっているのに色々な野球のやり方があるんだと理解ができて、自分の中で解釈ができればいいのですが、同じようなことをやっているつもりなのに、これまでは良かったことが今日からは違う、それは間違っていると言われた場合は、どちらが本当か信用できず、困惑してしまうは普通だと思います。 

例えば、学校の授業に置き換えて考えたときに数学や物理、あるいは英語、社会科、国語など、同じテキストを使っているのに全然教え方が違っていたりだとか、そもそも目指すところが違う指導をされている場合には、どのように勉強をして学びを深めていったらいいのか、なかなか子供の立場では理解ができません。

そのため、教科教育の方ではしっかりとカリキュラムが組まれて学習指導要領に沿って授業が進められているわけですが、課外活動になるとそれがまったくありません。

したがって、指導者が変わるとそれまでの練習内容、練習方法などが変わってしまうことが起きます。

こういったところが学校教育の中の課外活動における問題点の一つであると考えます。

中学、高校は成長期で伸び盛りの時期なので、この時期に精神的にも安定して、体を強化して、技術を上達させるということは後々のスポーツ人生を大きく花開かせるためにはきわめて基盤になってくる部分です。

この段階において苦手意識を持ったり、不信感を持ったりということになった場合には、そのあとの状態に非常に大きな影響を与えることが懸念されるところです。

こういった事態にならないために何が重要になってくるかというと、やはり指導する立場にある大人、部活動の顧問であり、学校で言えば管理職、そして子供たちを見守る周りの大人、保護者も含めて、指導する立場にあるという認識を持って、それぞれ学びを深める機会を設けてく必要があるのではないかと考えます。

全国各地で無料、有料問わず面白い講座が相当な数開講されていますので、ぜひ積極的に情報を求めていかれて、色々な方々の指導理念や指導理論などを色々聞いていかれると、本当に正しい運動を指導する人たちというのは根幹となる部分に揺らぎがないということを理解していただけると思います。

もちろん、指導の仕方については個性が存在しますが、そこで教えられる内容というものに狂いがあってはいけないはずなんですね。

例えば、病院の先生が病気の治療をするときに処方をしていきますが、それが一人ひとりがバラバラであればなかなか対応できません。やはり、医学的に確立された方法というのがありますので、それに従って、まずは王道から入っていくはずなんですね。

そういった基盤が部活の世界にないということになってきますと、影響を受けてしまう子供たちの心理的な状況というのは深刻な状態になるのではないかと考えています。

この点について別の事例でもみてみたいと思います。

若年期における能力が将来の能力であると決めつけない

小さな子供を最初から運動が出来ない子と決めつけるのは大きな間違いである。
幼稚園のとき本当に運動が出来なく、足も遅くて両親にいつも「本当に鈍いな」と言われていました。
しかし、小学校中学校くらいから足が速くなり、女子の中で3番目に速くなったのを覚えています。

これは発達段階に幅があるということの一つの証明です。

この時期にどのくらいのレベルになくてはならないのかというのは参考になるとしても、それはあくまで平均値の話であって、早熟の子、晩熟の子で大きな開きがあります。数年単位で差がある事は普通なのです。

ですから、大人が過去の自分を振り返ることもなく、今起きている現象として、例えば自分の子供や指導している生徒に対してこの子はダメだと決めつけることはとんでもない間違いです。

こういったものを見過ごして運動の指導をやっているのではないかと思われるケースが非常にたくさんあります。

特に体育の授業から部活動になってくるにつれてやる内容が高度で専門的になってくるわけですが、そこにどうしても対外的な試合だとか入ってきますと勝つことやベストを更新するといった成果を求められる部分がありますので、どうしても指導者ができる子を対象に物事を考えてカリキュラムを作りがちになります。

つまり、その時点で成長がまだ未発達の子たち、技術的にまだ未熟な子たちに対して特別な指導をすることもなくできる子たちと区別してしまいます。

こうしたことを改善するためには、やはり指導する立場にある人達がどうすれば子供たちの能力を伸ばすことができるのか、と言うことについて責任を持って真剣に考えて方法を追求していく必要があるというふうに考えています。

私(森部先生)は運動の指導をすることが専門ですが、例えば出来ている子たちに対しては、すでに出来ているわけですからいろいろ言う必要もなく、本人たちがもっとこのレベルにいきたいといった具体的な目標を持った場合には、そこに向けた解決策だとかをアドバイスしていくことになります。

しかし、大きな集団の中で出来ている子たちと言うのは限られています。

例えば、野球の場合だとレギュラーは9人、サッカーで11人、バスケで5人となっていますが、チームにはその倍以上の人数がいるわけです。

そこで、レギュラー、あるいはスターティングメンバーとして試合に出ることが出来ない子たちに対して、どうやってそこの中(レギュラーなど)に入っていったらいいのかについて個人の努力だけでもっと頑張れということに任せていないかということを問いかけたいと思います。

真の指導者は出来ていない子たちにこうすればできるようになるよと、君に足りないのはここだよということを仮に直接教えなかったとしても、本人に気付かせるようなヒントを与えたり、あるいはテストをして、その結果を正確にジャッジし、本人たちにも理解させながら不足しているものを解決するための策を授ける必要があると考えます。

方法が分かった上でやらないとうことであれば、もちろん個人にも問題がでてきますが、習う立場にいて、そこに先生と言う立場が存在するのであれば子供たちの方からしたら教えて下さいということは常に投げかけています。

そのときに正確に答えることができないのであれば、それは指導者としての能力不足であり、怠慢であると考えます。

これは保護者にも言えることですが、もし子供さんの年齢が若い場合、小学校低学年から中学生くらいまでの間が特そうですが、その時点で仮に周りの子たちと比べて能力が低いというように判断できたとしても、それはその時点での状態であって、そこから先数年後を証明しているわけではないということをしっかりと理解していただき、将来に渡ってどのように伸ばしていくのかという計画的な教育プラン、トレーニングプランといったものを考えていただきたいと思います。

筋トレTV 出演・動画監修 森部昌広 先生
九州共立大学 経済学部特別客員准教授・経済経営学科スポーツビジネスコース主任・サッカー部部長、一般社団法人全日本コンディショニングコーチ協会代表理事、一般社団法人日本メンタルトレーナー協会理事、九州大学非常勤講師(健康・スポーツ科学)、財団法人福岡県スポーツ振興公社スポーツアドバイザー、株式会社GET専務取締役、アイ・エム・ビー株式会社取締役、森部塾塾長

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