食べてもなかなか筋肉が付かない・・・食事によってどうすれば効果的に筋肉を付けることができるのか? 筋トレをしっかりして、食事もきちんと食べているのになぜか筋肉が付かない。筋トレは出来ているけど栄養摂取が上手くいかず効果が上がらない。そういった方が栄養摂取の面から効果的に筋肉をつけるための考え方をお話しします。 



筋肉をつけるために必要な食事法

男性は筋肉を発達させて大きくしたいという方が非常にたくさんいらっしゃいます。

ボディメイクという範疇の中で筋肉を出来るだけかっこよく、大きくしたいということなんですが、まじめにトレーニングに取り組んでいるにもかかわらず、なかなか体が大きくならないようなハードゲイナー(筋肉が付きにくいタイプ)の方の中にこういった方々がいます。

食事をしてもなかなかたくさん食べることができない、その結果体が大きくならない。胃腸が弱いということはありますか?と聞くと実は弱いんですと答えられる方がいます。

食べたものが身にならない場合にはいろいろなケースが考えられますが、私(森部先生)の経験では胃下垂が挙げられます。ドカ食いで凄くたくさん食べられるわけですが、その体のどこにそんなに入るのというくらいたくさん食べても全然大きくならないといった時期がありました。

これを変えたいということでトレーニングを始めて、自分の肉体改造をやっていったわけですが、なかなか大きくなれないといった方は自分の経験を投影してしまって何とかしてあげたいと思うわけです。

そのような中で我々がトレーニングやフィットネスの世界でなんとか対応できるものと、そうではないものとしっかり分けて考えないとこれは大きな問題になってしまいますので、それについて少しお話をしたいと思います。

自分の体を知る

食べても大きくならないような方で胃腸が弱いという方々の中にはフィットネスやトレーニングの世界では解決できないようなタイプもいるということもしっかり理解しなければいけません。

医療の世界で精密検査を受ける、専門医の診察を受ける必要が出てくる病気も中にはあります。

例えば何かを食べるとすぐに戻してしまうとか、あるいはちょっと食べるとすぐにお腹を下してしまうというような方がの場合、原因にはいろいろなことが考えられますが、これは我々のような素人がどうこう言っていいものではありませんのでここで触れることはしません。

どうしても体調がすぐれない、すぐに戻してしまう、下痢をしてしまう、こういった方々の場合にはまず病院に行って正確にその原因を突き止めることから入っていただければと思います。

ところが病院に行っても、そのような体質なのではないかと、神経的な部分もあるかも知れないけど食べ過ぎたり、変なものを食べなければ大丈夫ですよということで、薬を飲むことも必要でないレベルの場合は次のようなことに注意をしていただければ、もしかすると改善ができるかも知れません。

サプリメントの活用

どうしても量をたくさん食べることができない方の場合、筋肉を大きく発達させる場合には何をさておいても筋肉に過負荷、オーバーロードをかけて筋トレをある程度の頻度を保ち、継続しなければいけません。これができていることが前提となります。

トレーニングを十分にやって体もパンパンに張っている、あとは栄養摂取だという状態になってきた場合に必ず体を大きくするための条件として必要になってくるのが、消費エネルギーよりも摂取カロリーの方が大きくなければいけないということです。

それから総摂取カロリーに占めるタンパク質の量が多くなければいけません。

この2点が絶対的に必要になります。

ところが栄養を体の中に入れたときに、いつまで経っても胸やけが収まらない、あるいは食べ過ぎると下痢をしてしまうような場合は、量の制限が出てきますので、たくさんは食べられない、次に食べるまでに時間を開けなければいけないということで、どうしても体の中をアナボリックな状態を保ち続けることができなくなってしまいます。

そうするとせっかく質の高いトレーニングをやったのになかなか筋肉が大きくならないというケースが出てくるわけです。

これを最も簡単に解決できるのではないかという方法の代表としては、一つはサプリメントの活用です。

食事の量は胃腸を圧迫しない程度に少な目に抑えて、その分不足しているたんぱく質の量とカロリーを取り入れるためにサプリメントを効果的に活用する。そのサプリメントにはアミノ酸ベースのもの、あるいはプロテインベースのもの、どちらでも構いませんが、自分の好みに応じて摂取すればよいかと思います。

そんなことはもうやっているという方もいるかも知れません。

筋トレをして、しかもサプリメントも採用して細心の注意を払っているけれどもあまり効果がないという場合に考えなければいけないのは、そのサプリメントが本当にいいものかどうかの見極めです。お店に売っているから本当にそれがいいのかというと分からないわけです。

ある基準を満たすことで販売しているわけですから、メーカーの都合として少しでもコストを抑えて利益率を高くするという観点から考えると皆さんの体にとっては合わない可能性もあるわけです。

ですから色々なブランドがありますので、A社のものを使ったら、今度はB社も使ってみる、C社も試してみる。こういったことを自分で試行錯誤しながら、どこのものが一番いいのか(合うのか)とか、どのタイミングで飲んだらいいのか、どれくらい飲んだらいいのかということについても自分流のレシピを作っていく必要があります。

特に飲み方に関しては、牛乳や好みの飲料に大さじで3杯入れるとかパッケージに書いてあったりしますが、これは一つの飲み方であって、それが正しいのかというとそんなことはないわけです。

それぞれに合った飲み方がありますのでトライアンドエラーを繰り返していただいて自分流の方法を確立していただければと思います。

100回咀嚼をする

これ以外の部分に関しては、まずポイントになってくるもので口、胃、それから腸に関する部分で考えていく必要があります。

まずは口では咀嚼の問題が出てきます。口の中に頬張った時にどれだけたくさん噛んでいるかということです。咀嚼の重要性というのは、いくら説明しても説明しきれないくらい非常に多くのものがあります。

まず大前提として虫歯がないこと、それから噛み合わせのバランスが取れていること。その上でたくさん噛んでいるということ。

噛むことに関しては、一口100回噛むことを推奨しています。10回、20回、30回ではありません。100回です。

もちろん、トレーニングとしての目標値として100回を設定しているわけですが、繰り返し実験をやった結果、最低でも80回以上噛まないとよい状態にはならないことを数々の実験で目にしてきました。

そこでまずは咀嚼回数を増やすことをオススメしています。

ところが虫歯がない、歯の噛み合わせもちゃんと調整ができている。その上でたくさん噛んでいるという場合で、その次に問題となるのが、唾液がたくさん出ているのかということです。

いくら咀嚼していても、水などを口の中に入れて液体の状態で噛んでいるというのではなく、自分の唾液をたくさん出すことによって咀嚼物をうまい具合に希釈できているのかどうかということです。

唾液で食べ物を薄めていく、口の中で食べたものをサラサラの状態にしていくというくらいたくさん噛んで、たくさん唾液を出すということが課題になってきます。

これができていると、胃や腸にかかる負担というのは、激減させることができますので胃腸があまり丈夫でない方も胃への負担や栄養の吸収においてかなりの部分改善できると思います。

胃の働きについて

ところがそれでも次の問題があります。

胃の中に食べ物が入ってきた時に今度は胃液が出ないといけませんが、胃の働きが弱いためにどうしても胃の中に滞留してしまってガスが発生してしまうといったケースにあるような方の場合は、なかなか食べたものを有効に消化、吸収して活用することができなくなってしまいます。

その場合に推奨しているのがサプリメントと同じようなカテゴリの中にありますが、消化酵素剤というものがあります。私もよく使ったんですが、例えばエビオスやキャベジン、強力わかもとなど、ドラッグストアなどで薬剤師の処方が無くても購入できるものがあります。

これはラベルを見ていただいたら分かりますが、胸やけを起こしたときや胃腸が弱い方、消化不良の方、こういった方々が飲むようになっています。

私は、これを飲んで、食べて、強制的に体の中にたくさん摂取していくということをやっていました。

この方法は、国内のボディビルとか、ボディメイクをやっている方は試されている方が多いと思います。

昭和時代から普通にやっていたことですので、おそらく今の方でも利用されているのではないかと思いますが、試したことがないという方の場合は、こういった方法もあるということを一つの事例として理解いただければと思います。

腸内環境を改善

それから腸に関しては、腸内環境を改善することが大切になります。

お腹の中の状態を良くするということで腸のマッサージをしたりだとか、あるいはデトックスと言われる手法でファスティングをして食事を摂らずに一旦お腹の中を空っぽの状態に掃除をし、それから徐々に腸内細菌層というのもののバランスを改善するために酵素を取り入れたり、あるいは乳酸菌を入れたりする方法があります。

というようなことで自分の体をメンテナンスしていくという手法がありますが、こういった方法も専門の方について指導いただければかなり自分の体の中の環境を変えていくことができると思います。

あくまでも自分の体を使った壮大なる人体実験ということになっていきますので、決して無理のないようにするということと、まず第一段階で健康で体力があるという状態で、病気をしていないことが大前提になります。

その上でできれば専門医、もしくは専門的なインストラクターについて指導を受けながら自分の体の中を一回きれいに掃除をした状態で食事の摂り方を考えていければいいのではないかと思います。

胃や腸の負担を減らすことも大切

どうしても我々は、お腹が空いてしまうと、特に筋肉をつけない人の場合は空腹状態が長くなってしまうとカタボリック優位になってしまいます。つまり、筋肉が分解されやすい状態になってしまいまうのはたしかです。

そうならないために、ちょこちょこ食いで常に胃の中に何かを入れてしまう状態を作ってしまいがちになりますが、お腹の中にモノが入っているというのは体に取っては決していいことではなく、負担が大きくなります。

常に消化活動を休むことができない状態に体を置いてしまうことになりますので、例えば血糖値を一定レベルでコントロールするという部分にだけ関して言えばちょこちょこ食いというのはたしかに一定の効果を出す部分はあります。

ただ、常に胃腸を働かせているということに関して言えば、体はいつまでたっても疲労から回復できない状態でもあります。

別の事例で想像していただければわかりますが、例えば火事が起きたと、そこに消防士が急行して消火活動すると、今度は他のところで火事が起きたらまた行く、といったことを繰り返してはいつまでたっても休めません。これでは屈強な消防士もいづれはダウンしてしまいます。

これと同じようなことが“字”は違いますが体の中でも起きているということを考えたら、いたずらに何でもかんでも食べればということではないということですね。

これを改善するために、特に胃腸が弱い方の場合には、まず食事のタイミングについては空腹になってから食べるということを考えていただきたいと思います。

空腹でもないのに食べれば当然胃腸は疲れてしまいますから、まずは空腹を感じて、そしてその時にドカ食いをせずに100回の咀嚼をベースとして考えて、よく噛んで食べるということ。

それから食べなくてもいいものは極力食べないということです。

筋肉を付けるためには筋肉の材料となるものを摂るべきであって、それはたんぱく質以外のものではないんですね。

そのため、お腹いっぱいに食べればいいということでご飯やパンや麺類、果物などをたくさん食べたところで筋肉を大きくすることはできません。

ですからまずは優先すべきものを先に食べるようにして、それを一口100回噛む。そして、それを少しずつ食べる。それから胃や腸の状態を見ながら体が疲れないような状態を確認したうえで少しずつ食べる量を増やしていきます。

食べる量をやがて増やしていかなければならないとういうのは、摂取カロリーをプラスにしておかないと筋肉が大きく発達しないからです。

ですから、段階を追ってそこまで持っていかなければらりませんが、胃腸が弱いような方の場合は、「たくさん食べないといけないよ」、「タンパク質を増やさないといけないよ」、「サプリメントをとりなさい」というようなことを真に受けていっぺんに全部やろうと思っても体が付いてきません。

そのため、自分の体に合ったやり方を上記で話した中から、少しずつチョイスしていき、自分に合ったやり方というものを作っていく必要があります。

筋肉を作るというのは、非常に素晴らしい活動ではありますが、とても難しいものでもあります。簡単にできるような才能に恵まれた人もたくさんいますが、なかなか筋肉が付かないからこそ、あの手この手を考えて知恵を使って自分なりのメソッドを開発していくことはそれだけやりがいがある取り組みであると考えます。

ぜひ自分に合ったプログラムを考えて完全なる体を作ることに専念していただければと思います。

筋トレTV 出演・動画監修 森部昌広 先生
九州共立大学 経済学部准教授・経済経営学科スポーツビジネスコース主任・サッカー部部長、一般社団法人全日本コンディショニングコーチ協会代表理事、一般社団法人日本メンタルトレーナー協会理事、九州大学非常勤講師(健康・スポーツ科学)、財団法人福岡県スポーツ振興公社スポーツアドバイザー、株式会社GET専務取締役、アイ・エム・ビー株式会社取締役、森部塾塾長