筋トレや格闘技をやっている人は、一度はブルース・リーのような体になりたいと思ったことがある人もいるのではないでしょうか。特に腹筋や背筋は目を見張るものがありました。そんなブルース・リーの腹筋・体幹部を作った筋トレのひとつがドラゴンフラッグ。独特なフォームが印象的で一見できそうにないと躊躇してしまいそうになるアクロバティックな種目です。そこで今回は段階を踏んでトレーニングしていくことで誰でもドラゴンフラッグができるようになるトレーニングメニューを実演・解説します。ぜひ日々の筋トレメニューに取り入れて”ハガネ”の腹筋づくりに役立てて下さい。

【第1~第2段階】



【第3段階】

【最終形(第4段階)】

段階を踏んでドラゴンフラッグを完成させる

ドラゴンフラッグ完成形の図

体幹全体を非常に効率よくトレーニングする種目としてドラゴンフラッグという有名な運動種目があります。これをできるようにするための手順を説明していきます。

最近でもドラゴンフラッグに挑戦している人達を見かけますが、最初からドラゴンフラッグをやろうとしてなかなかうまくできなく間違った動きが癖になってしまっている人も多いです。

そこで、できるだけ短期間のうちに正しく行えるようにするための手順をお伝えしたいと思います。

これは一つの方法ですので、もっと効率のいい方法もあるかも知れませんから、また新たな知見が得られたときには再度説明をする機会を設けたいと思います。

まずは完成させるためのトレーニングの段階を以下のように分けてみました。

  • 第1段階 ・・・ レッグレイズ、ヒップリフト
  • 第2段階 ・・・ アップサイドダウン
  • 第3段階 ・・・ ベイビー・ドラゴンフラッグ
  • 第4段階 ・・・ ドラゴンフラッグ


完成形のドラゴンフラッグが第4段階になりますが、そこに向かうまでの間に第1段階~第3段階まで少しずつ運動強度を上げながらドラゴンフラッグに近づいていくということを行っていきたいと思います。

では、まずは第一段階としてレッグレイズとヒップリフトという種目を行ってみたいと思います。

第1~第2段階

ドラゴンフラッグは、ベンチや台の上に寝て、上半身を腕で支え、体を伸ばして股関節の部分から脚が屈曲しないようにしながら、伸ばしたまま体の上下運動を行うという種目になります。

動きの中でどうしても脚を一定の角度で固定しなければいけませんから、その部分のトレーニングで「レッグレイズ」が一つの役に立つでしょう。

ただ、レッグレイズはドラゴンフラッグの中では行っておらず、(上半身と下半身を)真っ直ぐ固定していなければいけません。そこで、お尻の位置をシートから浮かす動作を行う「ヒップリフト」も第1段階でやっておきたいと思います。

なぜ、このように第1段階にレッグレイズとヒップリフトを入れたかと言いますと、ほとんどの方がきつい思いをせずに、ちょっと頑張ればできる運動だからです。

体力がない方や運動が苦手な方もいらっしゃると思いますので、その方々でもできるように少し細かく解説をしたいと思います。

レッグレイズ

レッグレイズ

まず、ベンチに仰向けに寝転がります。お尻の位置がベンチのヘリ(端)から出るか出ないかくらい、ギリギリのところで寝転がってください。

両手はシートにしっかりとホールドしてぶれないように固定をします。

この状態で、脚を持ち上げて下ろす。脚を伸ばしたまま垂直方向から水平方向まで動作していきます。

運動の強度が高くてきつい場合は、膝を少し曲げて行うと楽になります。慣れてきたらできるだけ膝を真っ直ぐに伸ばした状態で下していき、水平の位置までしっかりと持っていくようにします。

ドラゴンフラッグ自体は、脚を水平に持っていった状態で腰を固定したまま動かすことになるので、実際にレッグレイズのように股関節の屈曲運動は起きませんが、まずはレッグレイズからスタートして垂直の状態から下ろしていって水平のところでキープする強さを作っていきます。

従いまして、レッグレイズの段階が進んでいきますと、上下に稼働させるところではなく水平ポジション(脚を下ろしたポジション)でキープするところの持続時間が長くなっていくようにします。

重力に対して体が90度になったところが体幹に最も負荷がかかっていますので、レッグレイズの脚を上げていくときではなく、下ろしていって水平の位置で固定するのが一番きつい状態になります。

従いまして、回数がこなせるようになり、時間もどんどん伸びて腹筋が強くなってきた方の場合は水平の位置でキープをする時間を長くしていきますと、水平ポジションにおいてはドラゴンフラッグに近い状態になっていますので頑張ってください。

ヒップリフト

ヒップリフト

ヒップリフトは、体幹をできるだけシートに対して垂直に立てるような方向に向けて動かしていきます。簡単に言えば、股関節を90度に曲げた状態からお尻を持ち上げるトレーニングですね。

脚を伸ばしたままできない人は、膝を曲げて行って構いません。体力がついてきたら、徐々に膝を伸ばして行えるようにしていきます。

できるだけ高いところにお尻を持ち上げるようにしてみましょう。

間違っていけないのは、お尻を持ち上げる時に膝の位置を頭上の方向に持ってきてしまうやり方では効果的に強化することはできません。

ヒップリフトの間違ったやり方

股関節を曲げた状態で持っていってしまうと、頭上方向とお尻の方向との前後のバランスで頭の方が重くなるので、簡単に持ち上げることができますから体幹にはほとんど負荷がかかりません。

ドラゴンフラッグは、非常に強く体幹に負荷がかかるトレーニングなので、楽なことをやっていてもなかなかその運動(今回の場合、ドラゴンフラッグ)に近づくことができません。

従いまして、膝が頭上方向に倒れてしまわないように、なるだけシートに対して垂直方向にお尻が上がっていくようにします。膝はその延長線上にあるように、姿勢をコントロールして行うことを意識して下さい。

以上が第1段階のトレーニングになります。

アップサイドダウン

アップサイドダウン

第2段階ではアップサイドダウンという種目を行っていきます。

アップサイドダウンは、頭と脚が逆になることを意味していて、先ほどのヒップリフトを膝を伸ばしたまま行って、その姿勢のままキープする種目です。

ここまでの第1段階と第2段階はひとまとまりとしてトレーニングすることができますので、柔軟性と一緒に向上させていきながらバランス感覚、そして体幹の基本的な強度を上げていくように頑張ってみて下さい。

第3段階

次に段3段階へ進んでいきます。ここではベイビー・ドラゴンフラッグでさらなる体幹の強化をしていきながら、フォームをドラゴンフラッグの完成形へと近づけていきます。

ベイビー・ドラゴンフラッグ

ベイビー・ドラゴンフラッグ

ドラゴンの赤ちゃんと言うことで、完成形に比べると動く範囲が小さく、体の長さを短くして行うドラゴンフラッグです。

フォーム自体はドラゴンフラッグとほぼ同じです。

まずは、第2段階で行ったアップサイドダウンのお尻を持ち上げたところまで持っていきます。この姿勢から膝を折り曲げて、膝から支点になっている肩甲骨の内側くらいまでの距離を短くします。

つま先まで全部伸ばして行うのがドラゴンフラッグになりますが、十分に体幹が強化できていない場合は、動作が難しくなりますので、まずは膝を曲げて、その状態から上背部を支点に体の上下運動を行っていきます。これがベイビー・ドラゴンフラッグです。

膝を曲げた分だけ長さが短くなっています。これは支点になっているベンチのシートについている肩甲骨と肩甲骨の内側くらいのところと逆側の先端(この場合、膝)までの半径が短くなっている回転運動ですから、半径が短くなった分、力が小さくて済むということです。この段階でしっかりと体の動きをマスターしていただきたいと思います。

間違ったやり方としては下ろして上げる時に股関節を折り曲げて膝を頭の上の方に持っていくやり方です。

ベイビー・ドラゴンフラッグの間違ったやり方

このような動きになってしまうと、真っ直ぐに伸ばして行っている運動が股関節を曲げることによって運動そのものが楽になってしまいます。せっかくドラゴンフラッグに向けて強度を上げていっている時に逆に強度が小さくなってしまうので、発達が起きないわけです。

この状態でドラゴンフラッグに持っていくと、あまりにもきつすぎて間違ったフォームを覚えてしまうことになります。

そのため、ベイビー・ドラゴンフラッグの段階で曲げるのは膝だけ、そして太もも、体幹を成す角度ができるだけゼロ、真っ直ぐの状態で体だけが上下に動作するという感覚をしっかりとマスターして下さい。

くれぐれも簡単に上げようとして股関節を屈曲させない、そこのところを守って丁寧に繰り返してください。

最終形(第4段階)

いよいよ第4段階、ドラゴンフラッグの完成形を行っていきます。

ドラゴンフラッグ

ドラゴンフラッグ

ドラゴンフラッグは、見た目以上にかなり強度の高い運動になります。

もしかすると非常に身体能力が高くて見ただけで簡単にできる方もいらっしゃるかも知れませんが、私(森部先生)のこれまでの経験上は全人口の1%もいないのではないかと思われます。

しかし、そのような強度の高い運動でも段階を踏んで少しずつやっていくことによって必ず可能になりますので、ぜひ皆さんも計画的に取り組んで頑張っていただきたいと思います。

さて、完成形のドランフラッグですが、第3段階のベイビー・ドラゴンフラッグで体を立てた状態から膝を伸ばして、ここから体幹をできるだけ真っ直ぐにキープした状態で体の上げ下ろしを行います。

上げる速度をいたずらに速くしようと思うと軽い脚の方が簡単に上がってしまうので、せっかくキープできているものが股関節から曲がってしまって美しいドラゴンフラッグになりません。

ですから、動かすのはあくまで胴体が先になります。脚の先端から動かすのではなく、体の中心部分から動かすようにして少しずつ体を上げていくようにしてみましょう。

かなり運動強度は高いですが、第1段階をスタートして4つの段階を踏んでいくことによって必ずできるようになります。

運動プログラムの組み方

運動プログラムの組み方としては、最初のころは回数でトレーニングをしていくことになりますので、レッグレイズの回数も5回、10回、20回、30回と多く回数をクリアしていくというのが第一段階になります。ヒップリフトの場合も同じです。

しかし、回数だけでトレーニングしていっても、やはりドラゴンフラッグの完成した形、体を伸ばした状態で姿勢を支えるという強さがなければいけません。

そのため、慣れてきたらレッグレイズで脚を下ろして床に対してできるだけ平行になった状態でいかに長い時間持続することができるかという持続時間の延長に挑戦して下さい。

それから第2段階のアップサイドダウンは、体を浮かして垂直方向でキープします(肩甲骨の内側を付いた状態で逆立ちをするような感じになります)。その状態でできるだけ長い時間持続するようにします。

それができるようになってきたら、膝を折り曲げた形でドラゴンフラッグの長さを短くしてベイビー・ドラゴンフラッグを行います。これは反復回数をできるだけこなすことが必要で、30回くらいも目標に行って下さい。

ベイビー・ドラゴンフラッグで回数が30回できるようになってきたら、下ろしていったときにピタッと止めて、一番きついところで持続時間を延長していということで運動強度を高めていきましょう。

そのことを繰り返していきながら、いよいよ第4段階のドラゴンフラッグにチャレンジする流れでトレーニングを進めていきます。

実は広背筋も重要

映像(動画)をご覧いただいた方は、映像の中から分かる動作の雰囲気というものがあると思いますが、実は非常に重要なことはシートをしっかりと掴むことです。これもドラゴンフラッグを成功させるために不可欠な要素になります。

しっかり掴むには握力も必要になりますし、ドラゴンフラッグで最も大きく運動に関与しているのは広背筋という背中の筋肉なのです。

ですから、環境が許して鉄棒やぶら下がるものがあれば、ベンチの幅と同じくらいの幅でグリップを握って懸垂運動、プルアップをしっかり行っておきますと、実はドラゴンフラッグはやりやすい種目になりますので頑張っていただきたいと思います。

ヒントは、ブルース・リーや映画・ロッキーの中でシルヴェスター・スタローンが行っていたドラゴンフラッグ、非常に有名なシーンですが、彼らの体を見た時に広背筋が発達した逆三角形の体をしていることに気が付くと思うんですね。

じつはこのドラゴンフラッグは、背中を逆三角形にすることにも繋がりますので、シェイプアップにも非常に有効ですから、日々の筋トレメニューとしても、ぜひ取り入れてみて下さい。

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筋トレTV 出演・動画監修 森部昌広 先生
九州共立大学 経済学部准教授・経済経営学科スポーツビジネスコース主任・サッカー部部長、一般社団法人全日本コンディショニングコーチ協会代表理事、一般社団法人日本メンタルトレーナー協会理事、九州大学非常勤講師(健康・スポーツ科学)、財団法人福岡県スポーツ振興公社スポーツアドバイザー、株式会社GET専務取締役、アイ・エム・ビー株式会社取締役、森部塾塾長