第一段階の筋トレメニューが楽にできる、あるいは慣れてきたら今度は別の種目を加えて、さらなるスタイルアップを目指していきます。全身の筋トレ、下半身の筋トレ、上半身の筋トレとしてボディラインをバランスよく整えるメニューを実演解説していますので、体力合わせて取り入れていきましょう。 



さらなる体力アップ、スタイルアップを目指して

出産後の筋トレプログラムでスクワット、カーフレイズ、スプリットスクワットの3種目を約1ヶ月に渡って実践された方は次のプログラムに進んでも十分に適応できると思います。

※第一ステップとして確認、実践されてない方は「産後の筋トレ方法とその効果。まずは下半身の強化が重要」からご覧ください。

まずベルトやさらし等で体幹を固定・補強することによって安全にトレーニングを進めてきたわけですが、そのことによって獲得したのは自分の体重を支えるための下肢(≒下半身)の筋力でした。

そのことによって、むくみを解消して出産後の体調不良などを自分の努力によって改善することを実践してきたわけです。

膝周り、股関節周りの筋力を発達させることによってシルエットもかなり引き締まってきたことと思いますし、もっと色々なことができるというような体力的な自信も生まれてきたくらいの段階ではないでしょうか。 

この段階までくると運動の選択肢がかなり広がってきます。

例えば、赤ちゃんがいらっしゃるお母さんのために行われている運動プログラム・講座もありますが、そのようなところに参加しても問題なく対応できると思います。

安全かつ効果的な筋トレメニュー

自宅の中でもっとバリエーションを増やしたいというのであれば、腕立ての状態でキープをするという体幹強化プログラムが安全で非常に効果が高いので、第二段階として始められるといいのではないでしょうか。

腕立て伏せは、多くの方が体育の授業などでやったことがあると思いますが、ここでのプログラムでは肘の曲げ伸ばしをする必要はありません。

肘を伸ばしたまま、体を一直線に保って体幹を固定して、そのままの姿勢でキープをします。

アームスタンディング(プランク)

この運動のメリットは足が着いている手も着いている、どちらも着いているので休んでいるところがありません。

ましてや体やお尻が持ち上がったり、腰が反ったりしないように体幹を一直線に固定することを意識して行いますので、そのことによって体の周りにある体幹がかなり強化されていきます。

これは特に赤ちゃんを長時間抱っこするような状況においては、どうしても腕力だけでは支えきれなくなりますので、ほとんどのお母さんたちは少し腰をずらしたりして骨格のバランスで支えたりすることになります。このことによって実は知らず知らずのうちに骨格が歪んでいってしまいます。

この歪みにだんだん慣れてくると、歪んでいるにも関わらずそれを正常だというふうに自分の体が覚えてしまいます。これは非常に問題があります。

育児から解放されたときに腰の骨が曲がっていて、それが原因で腰が痛いということで悩む方も少なくないわけです。

ですから、できるだけ早い段階で体幹を強化して、体の軸を一直線に保てるようなバランスを取り戻す必要があります。

これを可能にするのが、上記に説明した腕立てプログラムです。

プランクということで紹介されているケースが多いですが、腕立てのまま保持するのでアームスタンディングという呼び方をしています。

これは腕の曲げ伸ばしをしない、膝の曲げ伸ばしもない、真っ直ぐにして固定する筋トレですが、それによって自分の重たい体重、そして長さがあります。この長くて重たいものを支えているという究極の自重トレーニングと言えます。

それでいて関節の曲げ伸ばしをしていないので筋肉が余計に太くなることがありません。体を細く引き締めていきながら、しかもシルエットまで美しくしてくれる、こういったメリットがありますので、この腕立てで行う運動プログラムをいくつかご紹介しまします。

4点支持のアームスタンディング

まずオーソドックスなトレーニングが、上記で説明した両手両足で体重を支える、4点支持のアームスタンディングです。

この状態で1分間ピクリとも動かずに自分の体を静止させることができればかなり強くなっています。

この運動をやるときに注意しなければいけないのは、頭が下がらないということです。

腕立ての形になったときには体幹は何とか頑張って腰を反らしたり、お尻が上がったりしないように意識が向くんですが、どうしても頭の重みが細い首で支え切れずに下がってしまう人が非常に多いです。

頭が前に倒れることによって頸椎にかなり負担がかかってしまいます。これはいいことではありません。きついかも知れませんが、頭を起こして頭からかかとまでを一直線にすることを意識して取り組んで下さい。

これを1分間ピタッと止まれるようになってきたら次の段階に入ります。

片脚を浮かす3点支持のアームスタンディング

両手両足の4点支持というところから、今度は両手と片足の3点指示に変えていきます。

片脚上げアームスタンディング

3点支持にすることによって脚にかかる負担は非常に大きくなりますし、体は横幅がありますので片脚を浮かすことによって体が旋回し始めるわけなんですね。

これを旋回しないようにグッと体幹を固定して支えることによってウエスト周りにかなり強いストレスがかかります。これが強烈に腰周りを強化してくれる負荷になるわけです。

これは、右脚左脚どちらもやる(右脚を上げて行ったら、次は左脚を上げて行う)メニューになりますが、同じ時間やって左右のバランスをとっていくということが重要になってきます。

最初のアームスタンディングで4点支持の両手両足の場合は、横から見た時に一直線になっているかに注意すればいいですが、片脚を浮かす3点支持の場合は縦のラインも見ていく必要があります。

なかなか意識することができませんが、例えば畳のへりの部分に自分の体の軸を合わせてみたり、フローリングのつなぎ目に合わせてみたり、目線を置けるポイントを決めることで、脚を上げたとことによって体が動いていないこと、あるいは体が曲がっていることを認識しやすくなります。

赤ちゃん抱っこスクワット

ここまでできるようになってきたら今度は赤ちゃんを抱っこしたまま行うスクワットを取り入れます。赤ちゃんを抱っこしたまま立ったり座ったりする方法になります。

この運動では垂直落下動作が入りますので、赤ちゃんも心地よい揺れを感じながら楽しめると思います。

ポイントとしては、通常のスクワットの方法で行うと赤ちゃんがお母さんの太ももに当たったりすることもあります。もしかすると運動することに一生懸命になって赤ちゃんの脚に負担をかけてしまうことになるかも知れませんので抱っこして行うスクワットの場合には脚を広げて行って下さい。

相撲スタイルスクワット(ワイドスクワット)といますが、脚を通常のスクワットの2倍程度に広げます。脚を大きく広げますので、つま先の向きは平行というより少し外側を向いた形になります。

そして、膝を曲げていく方向もつま先が向いている方向に曲げていくようにします。つまり、膝とつま先は常に同じ方向を向いていけなければいけません。

ワイドスクワット

これが怪我を予防して筋トレ効果を出すための重要なポイントになります。

赤ちゃんは体の前で抱っこしている状態です。複数セットを行う場合は、右と左で抱っこするポジションを入れ替えてバランスをとっていけばよいでしょう。

この相撲スタイルスクワットにより足幅を広げた形でしゃがみ込んでいくことで、太ももの付け根の部分、そしてお尻の部分にかなりいい刺激を与えることができますので、ヒップアップの効果が期待できます。

この種目を取り入れることで、さらに運動の効果を出していただければと思います。

回数は徐々に増やしていって構いませんが、非常に面白いのは赤ちゃんは毎日体重が増えていっています。これは究極のオーバーロードトレーニングとなります。

効果を上げるためには体力合わせて負荷を少しずつ高めていかなければいけないのですが、赤ちゃんを抱っこし続けることによってお母さんは究極のウエイトトレーニングのスペシャリストになることが可能となるわけです。

ジムに行っておもりを増やすことよりも赤ちゃんの微妙な体重の変化というものの方が体にとって体の負担が少ないわけですし、それでいて安全に筋トレ効果を出すことができます。ぜひ、すべてのお母さま方にチャレンジしていただきたい種目であります。

赤ちゃん高い高いスクワット

相撲スタイルスクワットが楽にできるようになってきた場合には、今度は赤ちゃんを高い高いして上半身の肩と上腕三頭筋(二の腕)、それから胸の上の部分を刺激できるいわゆるショルダープレスを取り入れていただければと思います。

お母さま方にとっては、重たく感じるかも知れませんが赤ちゃんも生後1~2ヶ月くらいの段階だったら10キロも20キロも体重があるわけではありませんので十分に高い高いすることができます。

ポイントは、高い高いして下ろしていきますが、下ろしたときにちょうど自分の目線と同じ目線まで赤ちゃんを下ろしてくるようにします。脱力して下ろし切ってはいけません。

目線の高さまで行うことによって肩や肘関節の安全性が保てます。そこからまた高く上げていき、それを繰り返します。

もう一つポイントがあります。高く上げる時に腰を反らさないということです。背筋と腹筋にしっかりと力を入れて、体の軸がうしろに倒れていかないようにします。それによって肩や上腕三頭筋にかかるストレスを高くすることができ、非常に有効な上半身のトレーニングプログラムになると同時に腰の怪我を防ぐことができます。

正しくやればかなり筋トレ効果が出てきますし、特に女性の方は抱っこをして上腕二頭筋(力こぶ部分)はかなり強くなっていても、逆側の上腕三頭筋はかなり弱い状態になって体脂肪が蓄積しています。

これを改善することによって腕のシルエットを非常に細く引き締めて美しく見せることが可能になりますし、肩を動かしていますので肩こりからの解消ということも十分に期待できます。

ぜひ、これらの筋トレメニューを加えて第二段階の赤ちゃんと一緒に行う産後筋トレを実践していただければと思います。

筋トレTV 出演・動画監修 森部昌広 先生
九州共立大学 経済学部准教授・経済経営学科スポーツビジネスコース主任・サッカー部部長、一般社団法人全日本コンディショニングコーチ協会代表理事、一般社団法人日本メンタルトレーナー協会理事、九州大学非常勤講師(健康・スポーツ科学)、財団法人福岡県スポーツ振興公社スポーツアドバイザー、株式会社GET専務取締役、アイ・エム・ビー株式会社取締役、森部塾塾長