筋トレで動作している時は、力の発揮や動作安定性・安全性などを高めるために呼吸にも気を使う必要があります。基本は呼吸を止めずに動作することです。いつ吐くのか、そして吸うのかタイミングを身に付けましょう。上級者向けの一瞬呼吸を止める「バルサルバ法」についても解説します。


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呼吸にも意識を払う

筋トレをする時は呼吸の方法にも意識を払う必要があります。

呼吸の仕方によって力の入り方や動作の安定に影響し、正しい呼吸がなされていなければ十分な効果が得られなかったり、怪我を招く恐れがあるためです。

まずは、大切なことは動作中に息を止めないということです。上級者向けの方法として止める方法(後述)もありますが、基本は止めないようにします。

呼吸を止めて動作を行うと、酸欠になることはもとより、血圧が上がって心臓や血管に負担がかかり不測の事態を招く恐れがあります。筋トレでは動作・フォームだけでなく、呼吸にも十分に気を配るようにしましょう。

呼吸の音がするくらいしっかりと呼吸してみて下さい。そうすることで呼吸を意識しやすくなるとともに、反復にリズムが出て動作もしやすくなります。

呼吸の方法

呼吸の方法としては、持ち上げる時に息を吐き下ろす時に息を吸います

別の言い方をすると、力を加える時吐いて元の姿勢に戻る時吸うようにします。

さらに筋肉の働きを基準にすると、ターゲットとする筋群が収縮していく時吐いて伸張していく時吸うようにします。

このように言い方を変えているのは、筋トレ種目にはいろいろなパターンがあり、動作が一律ではないためです。

ただ、その中でも最も汎用性が高いのは力を加える時に吐く、それ以外のポイントでは吸うパターンです。これだけでも覚えておくと筋トレ時の呼吸はおおむね良好に行うことができるでしょう。

このような方法で呼吸を行うことで、力を込める時には息を吐く力で腹腔内圧が高まり、体幹が固定されるため力を入れやすく、また動作が安定し安全にトレーニングすることができます。

なお、姿勢を保持する体幹トレーニング(プランクなど)に限っては、保持している間、自然に呼吸するようにします。

体に力が入っている状態を保つことになるので、その間力んで呼吸を止めてしまいがちになるので、姿勢を保つことを意識すると同時に自然な呼吸を心がけるようにしましょう。

種目別の呼吸ポイント

いくつかの種目をピックアップして吐くタイミングと吸うタイミングを解説します。

ベンチプレス
バーベルを上げる時(バーを胸から離す時)に吐き、下ろすときに吸う。
上げる時は大胸筋に力が加えられ、収縮する局面なので吐くようにします。

クランチ
背中を床から起こす時に吐き、元の姿勢に戻る時に吸う。
床から起こす時は腹直筋に力が加えられ、収縮する局面なので吐くようにします。

レッグレイズ
脚を上げる時に吐き、下ろすときに吸う。
脚を上げる時、下腹部を起点に腹直筋が収縮していく局面なので吐くようにします。

デッドリフト
立ち上がり始めたら吐き、しゃがんでいくときに吸う。
立ち上がる時に主働筋が収縮していく局面なので吐くようにします。

スクワット
デッドリフトと同じで、立ち上がり始めたら吐き、しゃがんでいくときに吸う。
立ち上がる時に主働筋が収縮していく局面なので吐くようにします。

ショルダープレス
ダンベルやバーベルなどのウエイトを頭上に向けて上げていく時に吐き、下ろしていくときに吸う。
上げていく時に三角筋が収縮する局面なので吐くようにします。

アームカール(バイセップスカール)
肘を曲げてウエイトを挙げていくときに吐き、下ろしていくときに吸う。
肘を曲げていく時(屈曲)に上腕二頭筋が収縮する局面なので吐くようにします。

ライイング・トライセプスエクステンション
肘を伸ばしてウエイトを上げていく時に吐き、肘を曲げて下ろしていく時に吸う。
肘を伸ばしていく時(伸展)に上腕三頭筋が収縮する局面なので吐くようにします。

プランク
保持している間、自然な呼吸を心がける。
力を込めたまま保持するため、無意識に息を止めてしまっていることがあります。止めないよう十分に注意して下さい。

ブーメランヒップリフト
少し特殊な呼吸パターンになります。
腰を曲げて“への字”にしていく過程で吐き、プランクの姿勢に戻る過程で吸う。

トランクツイスト
トランクツイストも少し特殊ですが、最も多くの筋群が強く刺激されていく局面で息を吐くようにします。
この場合、腰にひねりを加えていくときです。腹直筋だけでなく腹斜筋も強く刺激されます。
それをもとに呼吸パターンを示すと以下のようになります。

腰にひねえりを加えてダンベルを床に近づけていく時に吐き、中央に戻る時に吸う。中央を通過し、逆側にひねりを加える過程で吐く。中央とは正面を向いた状態のことです。

左右へのひねり運動という繋がった一連の流れの中で呼吸を行うため、少し分かりづらいかも知れませんが、左右を別々にすると分かりやすいかも知れません。
ひねる時に吐く、中央に戻る時に吐く。これを左右で行うと考えてみて下さい。

ニーアップ
ニーアップでは、筋収縮に重点を置き、膝を上げ切ったところからバネを使い少しでも上げるように動作することで腹直筋を強く刺激します。
そのため、可動域が狭く、小刻みな動作になります。
この場合の呼吸方法は、自然に呼吸する方法と動作に合わせて行う方法があります。

自然に呼吸する方法は、特に呼吸を意識することなく動作を通じてありのままに呼吸します。

動作に合わせる方法は、これまでお話ししてきた通り、「力を加える時に吐き、元に戻る時に吐く」やり方になります。
ニーアップでは、動作が早く小刻みな運動になるので、その分呼吸も早くなります。
バネを使って膝を上げる時に吐き、反動で戻る時に吸います。これを早いテンポで繰り返すことになります。

どちらの方法を使っていいですが、動作に合わせる方がリズムを取りやすいので動作しやすいかも知れません。

チンニング(懸垂)
肘を曲げて体を引き上げていくときに吐き、肘の伸ばし下ろしていくときに吸う。
肘を曲げていく時に広背筋が収縮する局面なので吐くようにします。

上級者は一瞬息を止めることも

スティッキングポイントという動作が最も困難な局面を指すポイントがあります。

このスティッキングポイントを通過する時に一瞬だけ息を止めることによって、力の発揮や体幹をより固定する力が高まり障害防止や動作安定性(正しい姿勢の保持)が増します。

この一瞬だけ息を止めるテクニックを「バルサルバ法」と呼びます。

あくまで一瞬だけです。止め続けないよう十分に注意して下さい。感覚的には1秒程度のほんのわずかな時間になります。

障害防止については、高重量を扱う際に取り入れる場合が多く、一般的に脊柱や下背部に大きな負荷がかかる種目に用いられます。

例えば、スクワットやデッドリフトです。

スクワットは主に脊柱に負担のかかるバックスクワット(バーベルを肩に担いで行うスクワット)でバルサルバ法が用いられ、「力発揮+動作安定性+脊柱の保護」の3点に効果を発揮します。

具体的には、しゃがみ終わって上げていくすぐ位のところでスティッキングポイントが訪れるのですが、スティッキングポイントまでは息を吐き、最もきついところで一瞬息を止めて腹腔内圧を高めます(この時、体内部から脊柱に過度な負担がかからないようにサポートしている)。スティッキングポイントを通過したら、すぐに息を吐きながら立ち上がります。
デッドリフトは主に下背部への負担が大きく、高重量を扱うときは腰の障害に注意する必要があります。その際、バルサルバ法を用いることによって、力発揮と同時に腰への負担を軽減することに役立ちます。

デッドリフトもしゃがんで上げていくすぐ位のところでスティッキングポイントがきます。

スティッキングポイントまでは息を吐き、上げにくくなったところで一瞬息を止めて腹腔内圧を高めます。スティッキングポイントを通過したら、すぎに息を吐きながら立ち上がります。

このように、バルサルバ法は高重量を使う際などの力発揮や障害防止に役立ちますが、息を止めることで血圧の急激な上昇を招いたり、心臓への負担が大きくなったり、少なからず危険が伴います。極端な例では意識を失うこともあります。
そのため、初心者においては避けなければならないことであり、呼吸をし続ける方に重点を置く必要があります。また、呼吸器系の持病や過去にかかったことある人も避けなければいけません。

バルサルバ法は、経験豊かな上級者が高重量を扱う際にだけ適用するのが望ましい取り入れ方であると言えるでしょう。

終わりに

知らなければ、あまり意識することのない呼吸ですが、筋トレではとても大切な技術のひとつです。

呼吸を止めずに動作することを基本に、どのような動作の時に吐き、そして吸うのか、はじめの内は意識しながらトレーニングを進めて下さい。

何度かやっていると、体に染み込み無意識にできるようになりますので、軽視することなく取り組んでいきましょう。

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