骨密度が低下することで、骨がもろくなって骨折しやすくなる疾患「骨粗鬆症」。主に老化や閉経を起因として現れ、50歳以降の女性の3人に1人が骨粗鬆症にかかっていると言われています(男性は女性の約3分の1)。若い方は、未来の自分への知識、そしてお父さんお母さんや祖父母の健康を守ってあげるためにも今回の講座から学びを得ていただければ幸いです。



骨を丈夫にして、転ばない体づくりを

高齢者の健康教育の中で骨の密度を高くするために運動プログラムを取り入れることは一般的に行われている方法です。

しかし、そのことによって本当に骨粗鬆症が改善できるのかと言うことについて明確に説明している人はあまりいません。そこで、この機会にご説明させていただきたいと思います。

骨粗鬆症というのは、骨の中の密度が段々小さくなってスカスカの状態になっていく病気を意味しています。分かりやすく言うと、“大根”みたいな骨だったものが、“れんこん”のような状態になる感じです。

密度が詰まっているものが、段々スカスカになっていくと何が起こるのかというと骨折しやすくなるという問題が起きます。

日本は今、非常に高齢社会になっていて社会問題になっていますが、この高齢者の方々が寝たきりになると医療費の負担が増えてしまうので、寝たきりにならないようにするためには転ばないようにしなければいけないと一般的に言われています。

その中で運動プログラムの必要性も普通に言われるようになってきましたが、なぜ寝たきりになるのかというと、転倒したときに骨折をして、骨折する場所が大腿骨の付け根の部分(大腿骨頸部)が骨折すると動けません。これが寝たきりになってしまう原因の最大の理由であります。

病気が元で寝たきりになる以外では、転倒→骨折→寝たきりというのが、最大の寝たきりの要因になりますので、転倒して骨折しないようにするためには、どうすればいいのか?

その方法には2つのアプローチがあります。

一つは骨そのものを丈夫にすること。もう一つは転ばないような体づくり、動きづくりをすること。この両方が必要になってきます。

そのどちらにも筋力トレーニングは効果があるわけですけれども、なぜ筋トレをすると骨が丈夫になるのかということに今回は焦点を絞ってお話をしたいと思います。

筋トレで骨密度を改善させる

栄養学的な面では、骨を丈夫にするためにカルシウムの摂取を増やしなさいということが言われます。

牛乳を飲む、小魚を食べる、カルシウムを含んだ食材をできるだけ食事として摂取することが勧められているわけですが、果たしてそれが本当に骨密度の改善に繋がっているのかというと実際はそう簡単なものではありません。

私(=森部先生)のジムに入会された60代の女性の方が、骨粗鬆症だと病院で診断されて「こんな私でもトレーニングできますか?」ということで、相談にみえたことがありました。

この方は比較的若い段階で骨粗鬆症の危険性があると判断されて病院の先生からカルシウムの薬を処方され、それをずっと飲み続けておられたそうです。

どれくらい飲まれていますかとお伺いしたところ、1年間継続していると。それで、どのくらい骨密度が改善したんですかと聞いたら、1%増えたと言われたそうなんですね。たった1%ですかとビックリしてドクターに質問されたそうなんですけど、ドクターは本来であれば下がっていっているところを逆に1%増えたんだから、これは非常に効果があったんだよとおっしゃったと言うことです。

私はそのことを確認した時点で、それだったらそのままトレーニングされて結構ですよと回答しました。それで、そこからトレーニングを開始したわけなんですね。

トレーニング開始して結構ですよとお答えした理由は、確かにドクターの言われたように1年間飲み続けたことによって1%増えているわけですから、その分については体の中に吸収が起きているという証拠でもありますので、それはある面では体は健康な状態にあると判断したわけです。

それであるならば、しっかりトレーニングをやって補強していけばいいということで、筋力トレーニングのプログラムを作ってやったわけです。

その後、うちのジムでトレーニングを3ヶ月継続してもらって何が起きたかというと、同じ病院で検査をしてもらった結果、骨密度が8%増えていました。

骨密度を高めるメカニズム

なぜ、そのような変化が起きたのかというと、ウエイトトレーニングをするときには骨にはいつも曲がる、しなるような力が加わっています。

例えば、力こぶの筋肉・上腕二頭筋を鍛えるアームカールで説明しますと、肘が支点になっているので、おもりを持って持ち上げようとしたとき肘は動いていません。おもりはいつも下に落ちようとしている力が加わっています。逆に手は上に持ち上げようとしているわけです。

前腕部分を繋いでいる骨格は、おもりは下に下がろうとしているのに、上に引き上げようとする筋肉と引っ張り合うことで、しなる力が加わることになるのです。

しなる骨そのしなるような力がかかったときに曲がっている側にマイナスの電気が帯電するようになっています。逆側にはプラスの電気です。体の中では消化されたカルシウム分というのは、カルシウムイオンになっていますので、2価の陽イオンになっているわけですね。このカルシウムイオンが、マイナスの帯電している骨にくっついて骨密度が高くなっていくと、カルシウムが強化されると言うのが一つの理屈であります。

それから、運動することによって、体の中にはいろいろな必要性が出てきます。細胞を増殖する、タンパク合成を起こさないといけないとか、不足している部分に必要量を補ってあげなければいけないという状況が起きてきますので、運動を追加することによって、食べた食事の中の栄養素を体の細胞の中に分配していくというような取り込み作用、それから合成作用が高まることが分かっています。

そのことを繰り返し行っていくことによって骨密度も改善することになるわけです。もちろん、骨を作っているものはカルシウムだけではなく、タンパク質の成分も非常に重要ですのでタンパク質の摂取量も十分に摂っていく必要があることは言うまでもありません。

重要なことは、食事の中に含まれているものを最大限自分の体の中に取り込んで、有効に活用するために筋力トレーニングを取り入れて、体に必要性を作ってあげるということが重要になるわけです。

使わないことが骨を弱くする要因(ホルモンの影響を除く)

どうして骨が弱くなっていくのかと言うと使わないから、使わないものはいらないということで強度を落としていくわけですね。

我々は立っているだけでも非常に大きな負担を受けています。重力の影響を受けています。高齢者の場合は筋力が弱っていますので、筋力が弱っているのに骨だけが非常に丈夫だったら何が起きるのかと言うと、椎骨(背骨を構成する一つひとつの骨)が積み木のような構造になっていますが、骨が丈夫過ぎると椎骨の間にある軟骨とか椎間板が潰れてしまうわけです。

筋力が強ければ問題ないわけですが、筋力が落ちていると骨が丈夫な場合は椎骨の間の軟部組織の方が痛んでしまうことが起きますので、自分の骨の中からカルシウム分を捨てて、脱灰(だっかい)することによって骨格を少し弱くして変形させて、おもみを分散させることによって健康な状態を少しでも維持しようという自然な現象が起きている分けなんです。

背中が丸くなったりすると、今度は動く時には転倒しやすい状況になってしまいますので、できるだけ真っ直ぐしたり、真っ直ぐするためには筋肉が必要、だから筋トレをやると。筋トレをすると姿勢がよくなるような筋力が付くだけではなく、骨そのものにもカルシウムの有効配分が起きて造骨作用が強化されます。

このようなことを覚えておかれると、筋力トレーニング対するモティベーションが上がると思いますので、ぜひこれまでの内容をしっかりと認識されて、日々の運動プログラムの中に筋トレを取り入れていただきたいと思います。

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筋トレTV 出演・動画監修 森部昌広 先生
九州共立大学 経済学部准教授・経済経営学科スポーツビジネスコース主任・サッカー部部長、一般社団法人全日本コンディショニングコーチ協会代表理事、一般社団法人日本メンタルトレーナー協会理事、九州大学非常勤講師(健康・スポーツ科学)、財団法人福岡県スポーツ振興公社スポーツアドバイザー、株式会社GET専務取締役、アイ・エム・ビー株式会社取締役、森部塾塾長