腹筋トレーニングと言えば、「クランチ」と言われるほど最もポピュラーな種目の一つです。効果的なのは言わずもがな、自宅などでも手軽にできるため、日々の筋トレメニューとして、腹筋を割りたい・引き締めたい、スマートなお腹を作りたい等々、目的意識を持った多くの方々が取り入れています。ただ、ポイント抑え、正確な動作で行わなければ効果は半減してしまいます。本講座で効果を高めるためのクランチの方法を身に付けていきましょう。



「クランチ」はお腹をへこまし、緊張を保ったまま動作しよう

腹部を強化するための代表的な種目「クランチ」について説明します。
(クランチは動作の形態からカールアップと呼ばれることもあります)

クランチに関しては、椅子などの上に足を置いて行う方法、椅子がない状態で自分の筋力で脚を宙に浮かした状態で行う方法など、いろいろな方法があります。

共通する特徴としては、足の裏が床から離れている状態、上半身に関しては手がフリーな状態であることです。

手の位置に関しては、手を頭の後ろに組む、肩の上に置く、バンザイをするような感じでオーバーヘッドで組む方法などがあり、それぞれ負荷のかかり方が変わってきます。特に決まりはありませんので、自分の体力に応じて方法を選ぶ形にします。

ポイントとしては、回数をこなすことに意識を持っていくのではなく、トレーニングの最中にお腹を緩めた状態ではなく、しっかりとへこました状態をキープすることが大切になってきます。もちろん、効果に影響してくることになります。

何も考えずに反復することだけをやっていますと、運動の前後、トレーニング中でもそうですが体の体積は変わりませんので、体を折り曲げたことによって腹部に緊張が無ければお腹は当然のごとく緩んでウエストが太くなってしまいます。

反復回数30回繰り返すと、30回お腹が緩むことになってしまいますので、それがないようにしっかり胸郭を膨らませて、お腹をグッとへこませます。へこました状態で、体幹を屈曲させていくとことがポイントになります。

この点は非常に重要で、これまで何気なく腹筋運動を行っていた人は、ぜひお腹をへこましたまま動作することを意識して行ってみて下さい。いままでとは、違った反応が得られるはずです。

また、可動域をできるだけ小さく行うことも重要なポイントになります。

なるだけ高く上げるんですが、下ろした時に背中が全部床に着いてしまうと当然腹部に関しては緊張が抜けてしまいます(リラックス状態となる)。なるだけ筋収縮を維持した状態、できるだけ小さな範囲でしっかり効かせて行うことを意識して行ってみて下さい。

「クランチ」のやり方とポイント

それでは、実際にやってみたいと思います

クランチの方法

椅子やベンチ、台などの上に足を置いて、膝の角度が90度になるポジションをとります。今回は両肩の上に手を置く形で行ってみましょう。この形がスタートポジションになります。

動作については、肘を膝に付けるようにして背中を浮かして腹部を屈曲させます。動作中は、お腹をへこました状態を保ちます。

限界まで屈曲させたら(腰は浮かさない)、腹部をリラックスさせないようにして(お腹をへこましたまま)小さな範囲で動作を繰り返します。目線の意識はおへそに持っていって下さい。

運動の強度を上げるためには、収縮したときに一呼吸止めるくらいの状態で行うと非常に強い収縮感が得られます。つまり、上げ切った時、最大収縮させたときに一瞬動きを止めるんですね。

反動使って動作してしまうと、足が浮いてしまったりして、ブレが大きくなってしまいます。ブレが大きくなると筋肉に対する刺激が他のところに分散してしまいますので、できるだけコアな部分に効かせるためにはブレがないように、できるだけ動作をコントロールしながら、小さく収縮させていった方が非常に良い効果が得られます。

繰り返しトレーニングを積んで、まずはフォームの習得から入って、しっかりした形でできるようになれば速度をコントロールして、速度のコントロールができるようになったら、最大収縮させた時に一呼吸止める。こういった段階を踏んだやり方で進めていくと、腹部に対して非常に強い緊張感が得られますので運動の効果を体感しやすいかと思います。

「クランチ」の間違ったやり方

よく体育会やスポーツクラブで腹部を強化するためにクランチを選ぶことが多いですが、間違ったやり方をしていることが少なくありません。

まず一つが、このようにダイナミックな動作を行う方法が挙げられます。

クランチの間違ったやり方

すごく動いてトレーニングをやっている感じにはなっていますが、実はすごく楽なんですね。下ろした時に自分の体の持っている弾力性と床の固さで、弾ませて起き上がることが可能なんです。

腹筋トレーニングの場合は、移動する距離が大きくなればなるほど、反動が使いやすくなってしまいますので、そうすると楽なトレーニングになってしまいます。

これを無くすためには、できるだけ緊張したポジションを維持しなければいけません。

筋トレで非常に重要になってくるのは、最大の収縮ポイントを作るということですね。よくピークを作ると言いますが、腹筋も一緒です。アームカールなどで上腕二頭筋のピークを作るのと同じです。

腹直筋に関しては、腰を付けたまま背中を床から浮かし切ったところがピークになります。このピークを基準に動作を行っていく必要があります。

ある程度、筋肉が伸びていくと緩んだ感じが自分で分かります。楽になったところがですね。その楽になるポイントをできるだけ避けるようにして、しっかりと追い込むことが最大の成果を上げるために重要になってきます。

クランチの効果

クランチは、機能解剖学的観点からみても非常に理にかなった腹筋強化トレーニングで、ピンポイントで腹直筋に効かせることができます。

この点から、腹部強化策としてのメニューを組む際には第一候補として選択するに適した種目であると言えます。

これは、一般の方がかっこいい腹筋を作りたい、お腹を割りたい、お腹を引き締めてスッキリさせたいなど、(正しい方法で行えば)目標を達成させるに足りる効果をもたらします。

また、当然競技スポーツにおいても効果を反映することができ、ボクシングや空手などの格闘技では、直接的な打撃から防御するための体づくり、野球やサッカー、バスケットボールなどの球技では、外側から体を強くするための体幹強化策の一環として取り入れることができるでしょう。もちろん、それ以外の競技でも腹筋を鍛えておくことによる効果は、鍛えてない場合に比べて大きなものとなり、フィジカルだけでなく、結果として技術的な部分も引き上げることが可能となるでしょう。

ただ、腹筋が相当に強くなり、延々と反復できるようになったのに、そのまま同じ方法を繰り返すだけでは成長は望めなくなります。もちろん、目標とする体づくりができて、それを維持するためであれば、そのまま継続することは、ある意味有効な方法です。

でも、そうでなければ、負荷を上げて、今の限界を突破して、次なる成長へと進まなくてはいけません。そのための方法には、ダンベルなどおもりで負荷を加えて行う方法、腹筋をメインとした複数の種目を組み合わせて行う方法などがあります。

まずは、続けやすく、自宅などいつでもできるクランチを行っていき、目標や体力の状態に応じて、さらなる成長策として刺激を増やす方法を採用してみて下さい。このようにすることで、期待する効果は必ず得ることができると思います。

クランチの目標回数(時間)と頻度

  • 【回数】60秒×1~3セット
    ※続けて行うことができない場合は、10秒を6回に分けて行ってもOK
    ※セット間の休憩は60秒
  • 【頻度】毎日~1日おき
    ※疲労度に応じて調節する
    ※場合によってはもっと空ける

筋トレTV 出演・動画監修 森部昌広 先生
九州共立大学 経済学部准教授・経済経営学科スポーツビジネスコース主任・サッカー部部長、一般社団法人全日本コンディショニングコーチ協会代表理事、一般社団法人日本メンタルトレーナー協会理事、九州大学非常勤講師(健康・スポーツ科学)、財団法人福岡県スポーツ振興公社スポーツアドバイザー、株式会社GET専務取締役、アイ・エム・ビー株式会社取締役、森部塾塾長