腰痛で悩んでいる方の中には、何かの拍子に時々痛みが出る場合から慢性的に痛みが続くことで日常に支障をきたすケースまであります。どのような状況にしても、どうにか改善でしたいと考えるわけですが、改善策の中でも筋トレは効果があるのであろうか?人体の構造、機能面から改善策を導きたいと思います。



腰痛のメカニズムと改善法

腰痛を抱えている方が非常に多くいらっしゃいます。この腰痛を改善するためにも筋トレは非常に有効になってきますので、そのことについての説明をしたいと思います。

なぜ、腰痛が起きるのか?

非常に負荷のかかるような作業をした時に椎間板を痛めてヘルニアになってしまったとか、あるいは急激に大きな力を出したことによってぎっくり腰になってしまったとか、急性が原因の腰痛があります。

一方、慢性的な体の使い方、クセによって一箇所ばかりに負担がかかることで腰痛を引き起こしてしまっているという慢性腰痛の問題もあります。

いずれの場合も筋トレは一定の効果を出してくれますので、そのことについて理解をしてもらおうと思います。

まずは運動のプログラムが腰痛の改善には重要になってきます。

腰痛を引き起こすメカニズムについては、筋力のアンバランスが挙げられます。お腹側にある筋肉と背中側にある筋肉との発揮できる筋力の大きさは腹筋よりも背筋の方が強いことがはっきりしています。

従いまして、筋力のアンバランスがあることが特徴としてあるわけですから、このアンバランスが大きくなりすぎると、当然力のバランスが崩れることによって負荷が一箇所に集中していきます。それにより動きが悪くなって、その動きが悪い部分が痛みを生じてくるということが起きてきます。

腹筋群を強くする

さらには、お腹側の厚みの方が、背中側の厚みよりも圧倒的に大きいわけです。筋力が弱いのに厚みがあるわけですから、その重さをキープすることができないので、骨盤が前傾して反り腰になってしまいがちになります。

従いまして、筋トレを行う場合には特に体幹部のトレーニングに関しては、お腹をいかにへこました状態でトレーニングするかという姿勢の問題が一つあります。

それから、ムーブメントで動作を起こす時にいつもお腹を意識してへこました状態をキープできているかということですね。

この2つは非常に大きいポイントになりますので、この点を踏まえて運動を実践していただきたいと思います。

そうしますと、背筋力に対して腹筋の方が弱いわけですから、まず単純に考えて腹筋群を強くし、お腹を抑え込むことによって厚みを薄くするということが運動のプログラムとして非常に重要になってきます。

このことをやっていくことによって、腰痛が少しずつ緩和していきます。

分かりやすい事例で言うと、腰痛がある方が、何もしていない状態からお腹をグッとへこまして、腹筋に力を入れたことによって、一時的でも少し腰痛が緩和された感覚があれば、その方は腹筋群を強化することで、てきめんに効果が出てきます。

お腹を引き締めていくことを意識しながら、体幹部のトレーニングを行う。これは非常に即効性が出てきますので、ぜひやっていただきたいと思います。

柔軟性を高める

腰痛が引き起こされるもう一つの要因としては、筋力以外では柔軟性の問題があります。どうしても柔軟性が乏しくて体が硬い方の場合は、動作の負担を一箇所で受けてしまう特徴があります。

分散することができないので、負荷が一箇所に集中して慢性疲労によって痛くなってしまうという現象が起きるわけですね。

ですから、運動プログラムの中には筋トレに加えて柔軟性を高めるようなストレッチのプログラムを取り入れていくことが重要になってきます。

筋トレをやると柔軟性のプログラムも入れやすいというメリットもありまして、筋トレは有酸素運動のように何十分も連続してやるものではありません。1セットが反復回数10回とか20回とかいう中におもりや動かすスピードによって負荷を高めていくのが筋トレです。

その筋トレはセットごとに必ずインターバルをとります。1セットやって次のセットに移るまでの間、このインターバルをうまく使ってストレッチを導入していくわけです。

筋トレをやって、ストレッチをやって、また筋トレ、そしてまたストレッチをする。これをやることによって体が硬い人でもそんなに苦にならずにストレッチのプログラムを入れることができます。

一度にたくさんやることを考えるのではなく、確実にできることを少しずつレベルを高めていきながら継続していく。このように取り組んでいって下さい。必ず改善する効果が出てきます。

筋トレ時の姿勢について

それ以外の部分に関しては、姿勢の問題ですね。

我々は真っ直ぐ立った状態から体が傾いていくにつれて腰部にかかる負担は大きくなっていきます。一番負担が大きな姿勢というのは、重力に対して腰の角度が90度のポジションです。深々とお辞儀をしているようなポジションですね。

このポジションでおもりを持つと、一番大きな負担がかかるわけですが、そのような不安定な状態で大きな負荷をかける(デッドリフトなど)ことをできるだけ避けることが予防としては重要になります。

動かせる範囲の中で確実に強くしていく。筋力は弱いよりも強い方が絶対に安全なので、必ず自分の現状を把握したうえで少しずつ扱う重さ、反復する回数、セット数、インターバルの長さ、こういったところに負荷が高めていけるようなプログラムを組んで、毎日継続していただければ結構です。

休養もきちんと取る

それからトレーニング効果というものは、今日やったことは少し先にしか現れてきませんので、必ず次にトレーニングを行うまでの間には十分に回復する時間をとっておく必要があります。

運動の習慣をつけるためには、毎日行った方がいいわけですが、同じ部位のトレーニングばかり毎日続けると底の部分はオーバーワークになってしまいます。体幹部のトレーニングをやる場合でも、例えば今日、腹部を中心トレーニングした場合は、明日は背中を少しやっておくという形でトレーニングの部位を少しずつ変えていくことが必要になります。

あるいはそこの中で取り入れている運動時間の比重を変えていくということで調整していただければ、必ず腰痛の改善にもつながりますし、それ以外でも肩こりとかある方でも同じように改善ができますので、ぜひ継続して実践していただきたいと思います。

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筋トレTV 出演・動画監修 森部昌広 先生
九州共立大学 経済学部准教授・経済経営学科スポーツビジネスコース主任・サッカー部部長、一般社団法人全日本コンディショニングコーチ協会代表理事、一般社団法人日本メンタルトレーナー協会理事、九州大学非常勤講師(健康・スポーツ科学)、財団法人福岡県スポーツ振興公社スポーツアドバイザー、株式会社GET専務取締役、アイ・エム・ビー株式会社取締役、森部塾塾長