O脚やX脚に悩んでいる方々が多くいます。でも、どのように改善すればいいのか分からないと言った声があると同時に施術しても一時的には改善しても徐々に元に戻ってしまうという声も聞かれます。O脚やX脚は骨格のバランスに影響して姿勢の崩れ、猫背などの原因にもなってしまいます。そこで、今回は本来持つ骨格を取り戻し、美しい脚を作る方法を筋トレを用いて検討していきたいと思います。



下肢のアライメント改善へのアプローチ

下肢のアライメント(骨格や関節の並び)を筋トレによって矯正できるのかと言うことについて解説したいと思います。

下肢のアライメントの中でも非常に多く聞く悩みがO脚やX脚です。脚の形、骨格の形について悩みを持たれている方が非常に多くいらっしゃいます。

気を付けをしたとき、脚と脚の間が開いてしまう。あるいは膝はくっつくけど足が開いてしまう。このようところが悩みと言うことで、相談を受けます。

一般的には、整骨院や整形外科等でそれなりの対処をされていたりするんですが、行かれた方に伺ってみたところあまり変化がないとか、一時的にはよかったけどなかなか定着しないということもよく聞く話です。

では、実際にトレーニングジム等で行う筋トレによって、どのくらい改善が可能かと言うことに関しては、結論から言うと改善ができるタイプものもありますし、ちょっと難しいというものも実際にはあります。そこに関しては慎重に進めていかなければいけませんので、このような動画の中で一般の方々分け隔てなくお伝えする中で限界はあるわけですが、よく内情を把握していただきまして、自分はどういうタイプなのかというところを認識して取り組んでいただければ、かなり改善の方向に向かうのではないかと思います。

現場で指導する場合には、個別に対応させていただきましていろんなテストをやって、その中から時間をかけて筋トレのプログラムを作っていきながら矯正をしていきます。

また、日常生活の中でいろいろ気を付けていただくことの方が圧倒的に多いので、その部分についても動画講座の中で説明させていただきます。

なぜ、O脚やX脚になるのか?

生まれつきO脚だった、X脚だったということは基本的にないわけですね。赤ちゃんの時には立っていないわけですから、立つようになるまではどういう状況であるか分からないわけです。

そうするとハイハイの状態からつかまり立ちをして、普通に日常生活を二本足で立って歩くことができるようになってから後天的に始まってくるものがほとんどであるということをまずは理解して下さい。

その中で考えなければいけないのは、筋力の問題、それから立ち方や体の使い方等の習慣の問題であります。

なぜ、これらを考えなければならないのかと言うと、私たちの骨格は特に成長期以降、成人で骨格が縦軸方向に伸びなくなってきた、いわゆる安定した状態の骨で考えた時に非常に強い強度を持っていますが、骨格の強さよりも筋肉や筋膜の方が強いというものがあるからです。

強い方に引っ張られる特徴があります。そして、骨と筋肉はユニット、セットになっていますので、骨格は筋肉に引っ張られることによって運動することができるわけです。

従いまして、正しい筋力の発揮の仕方、そして正しい立ち方をマスターすることによって骨格というものは時間をかけて少しずつ改善することができるわけです。

骨のターンオーバー、入れ替わりについては個人差はありますが、2~3年するとほとんどの骨が入れ替わってリモデリングされることが分かっています。

その新しい骨が形成されるときには、その時点でどのように骨に力が加わっているかという筋肉から及ぼされる力のベクトルによって骨格の成長の方向というものが決まってきます。

そのため、正しい体の使い方、正しい動き、こういったものをマスターしてより良好な骨格の位置というものを自分の骨に覚えてもらうことが大切になります。

その中で筋トレでできることがいくつかありますので、ご紹介したいと思います。

O脚・X脚改善は土台作りから

O脚になっている人の場合は、脚の外側の筋肉、大腿筋膜張筋などが強く、固く緊張した状態になっているので、引っ張られて骨格が変形してくるというようなことが言われています。

そこを例えば、マッサージとかでほぐして、緩めてあげて、そして骨頭を押さえながら骨格に力を加えて骨格矯正を行うようなことを手技として行われている方もいます。

私(森部先生)もこのようなことを行いますが、もう少し違ったところからアプローチをします。O脚やX脚の“脚”の部分、これは実は“足”がベースになって、その上に乗っかっているものであるという考え方をしています。

従いまして、土台が崩れていれば上も崩れるよというところですね、まずは土台の安定から作っていくということをクライアントさん達には個別に指導しています。

足の指で体重を支える

足の部分で最も重要なことは何かというと、足の指です。

指が着いているか着いていないか、ちゃんと指で自分の体重を支えて踏ん張ることができているかどうか、これが極めて重要なポイントになってきます。

どのように太ももの内側に力を入れて緊張させようと、土台が崩れているとそれはずっと持続できないわけですね。

私たちは日常生活の中でなるだけ楽に立つように無意識のうちに判断をして、絶妙なバランス感覚で立っていますので、土台が崩れていればその崩れている状態のまま骨格を歪めてしまうことになります。

例えば、片脚に体重をかけて立つというのも一つのケースですし、女性の方が内股にして立っているケースだと膝が少し緩んでお尻が落ちて、猫背になっている。このような立ち方をしている方というのは非常に多くいらっしゃいますが、このような土台が狂った状態ではいけないわけですね。

まず、足の指先は開いてなければいけませんし、親指の向いている方向と膝が向いている方向が同じでないといけません。

まず、立位で真っ直ぐに立ったときに自分の足元を見て膝の向きとつま先の向きが同じになっているかどうかを確認して下さい。

おそらく、O脚やX脚に悩んでいる方のほとんどが、そうなっていないことに気付くはずです。

ここを改善していくことが一番重要です。実際に整形外科に行っても、整骨院に行っても簡単に変えることができません。これを変えるのを可能にするのは実は筋トレが一番早いのです。

足指のトレーニング

自宅で行う場合は、必ず裸足で立つようにして下さい。裸足になってできるだけ足指を開くことをトレーニングとして行います。

慣れるまでの間は、自分の手で指を広げても構いません。

そして、指をしっかり床に着けて、指に体重をかけます。指を着けることによって体重は前にかけやすくなります。かかとは少し浮いても構いません。

このようにして指に体重を乗せながら、体全体を前傾させたようなポジションをとっていきます。非常に指がきつくなると思います。

ふくらはぎもきつくなります。ふくらはぎの筋肉は抗重力筋として、重力に対抗するときに非常に重要な筋肉であると言われています。女性はふくらはぎが弱い傾向にあり、それによって“むくみの原因”にもなります。このトレーニングでは、むくみの改善にも役立つことになります。

足指をしっかりと立つ。これが第一段階になります。1分を目安に踏ん張り続けるようにしてトレーニングしていきましょう。

また、家の中で立つ時、歩く時も指に体重をかけてかかとをほんの少し浮かして、その状態室内を移動することもトレーニングになります。かかとは高く上げる必要はありません。かかとを床に着けないように足指に意識を持っていき、荷重をかけて立って、そして歩くようにします。

足指+内もものトレーニング

足指のトレーニング以外でもっと筋トレらしいことをやっていこうとするとスプリットスクワットが効果的な筋トレ種目として挙げられます。

立位の状態から片脚をうしろに引いて、脚を前後に大きく開きます。そして、前脚の膝を屈曲させて、伸ばす。これを反復していきます。1分継続できることを目標にして、片側を行ったら脚を入れ替えて逆側も行います。1分継続できなければトータルで1分行うようにします。例えば、連続30秒が限界であれば、できなくなったら少しだけ休憩を入れ、すぐに反復を再開して残り30秒行うような形になります。この場合に2回に分割されますが、10秒が限界であれば、6回に分割されることになります。

脚を前後に広げることによって、立位で真っ直ぐに立っている時と比べると左右へのぐらつきが非常に大きくなります。

左右にぐらつきやすくなった状態でも足指をしっかりと開いて、膝がガクガクとしないように内ももに力を入れた状態でトレーニングをします。そのことによって太ももの内側に付いている内転筋が非常に強く収縮するようになります。それにより、筋肉の強さに引っ張られて曲がっている大腿骨や脛骨が引っ張られて徐々にO脚が改善することになっていきます。

同じ理屈でX脚の方も有効なトレーニングとして行うことができます。X脚では、膝が内傾しているわけですから、すねの骨が床に対して垂直に立つポジションを作って、その状態の中でゆっくりとした動きを行うようにスプリットスクワットを行っていくと非常に効率よく改善することができます。

骨格よりも筋力の方が強いので、筋力をトレーニングすることによって徐々に自分の骨格を矯正していくと、こういう考え方であります。

椅子を使った内もものトレーニング

これ以外の部分については、椅子を使ったトレーニングがあります。

横向きに寝て、椅子や台の上に片足を置きます。体は横に一直線の状態、腕は肘を曲げた状態にして床に押し付けて安定させます。もう片方の手は床に着いて添える形にします。

この状態から腰を持ち上げます。この姿勢を取るだけで椅子の上においた側の太ももの内転筋はしっかりと起動しています。非常にきついです。この姿勢で1分を目標にキープします。できなければ、スプリットスクワットで説明したように合計で1分になるようにしてトレーニングしていきます。

腰の位置については、最初は低いところから始めて構いません。慣れてきたら、徐々に高いところでキープできるようにします。

キープできるようになってきたら、少し腰を上下させる動きを加えます。なるだけ腰の位置を高い位置に持ち上げるトレーニングをします。そうすると非常に太ももの内側がトレーニングされて、内ももの引き締めになりますし、さらにそのことによって骨格の矯正が起きてきます。そして、わき腹も細く引き締まってきます。女性の体の美しいラインを作るのに貢献してくれます。

さらにトレーニング強度を上げていく場合は、下の脚に動作を加えていきます。下の脚を浮かして椅子の座面を挟んだら、ゆっくり下ろしていくようにします。

最初は、(座面を挟んだまま)止めることができないので、動かしながら徐々にトレーニングしていきます。

慣れてきたら座面を挟んだままキープするようにします。

このように段階を追ってトレーニングしていくと太ももの内側を特に強くしていくことができます。

多くの方は日常生活で立っている時にも歩いている時も小指側に荷重をかけているのが普通の状態であります。

従いまして、その状態が常態化すると、ほとんどの人がO脚になっていきます。

X脚の方の場合は、その逆の状態になっています。膝が内側に入った状態で倒れているわけですが、内ももと外ももとのバランスを取ることがまず重要になりますし、それよりも先だって足、脚よりも前に付いている足の指を強化しておかないと下肢の矯正はできないということをしっかりと覚えておいてください。

日頃、椅子に座った状態が長い人のトレーニング法

事務仕事など椅子に座った状態が長い方の場合について、仕事をしながらでもトレーニングできる方法をご紹介します。

まずは、足を引いて膝を深く曲げないようにすることがポイントになります。

“すね”はいつも立っている時も座っている時も床に対して前から見ても横から見てもすねは垂直に置くということが基本になります。

その状態で指先に体重をかけてかかとを浮かします。

このような状態で仕事等をすることによって筋肉を使っているのでむくみにくくなりますし、さらに足の指にしっかりと力が入っていますので、骨格を矯正するための基盤づくりに十分なります。これがトレーニングになります。

このことを毎日やっていきながら、立っている時、歩いている時に足の指に力が入るように少しずつ慣らしていきます。慣れてきたら、スプリットスクワットで膝がぶれる状態をあえて作ることでトレーニングを行っていきます。ただし、あえてぶれる状態を作るんだけども、膝の屈伸運動を行うときには、なるだけ膝がぶれないようにゆっくり注意深くトレーニングするようにします。

これは競技選手が行ってもなかなかすねを真っ直ぐに立たせたまま行うことができないくらい難しい種目です。

膝がグラグラしながら回数だけ行っている人もいますが、これは間違った方法です。まずできるだけ大きく脚を開いて、膝のブレがないようにすること、そして少しずつバランスをと整えていくことが大事になってきます。これを続けていきながら、回数がこなせるようになって運動の負荷を上げていきたい場合に先ほど行いました椅子の上に足を乗せて行うトレーニングを加えていきます。

このように骨格ではなく筋肉に負荷をかけることによって骨格のゆがみを正常に持っていくという矯正ができることになります。

いずれにしてもこのトレーニングは、やっている間には効果がありますが中断すると(期間が空くと)また元の状態に戻ってしまいますので、美しい姿勢、特に美しい脚を作っていきたい方は決してやめることがないように毎日規則的に継続していただきたいと思います。

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筋トレTV 出演・動画監修 森部昌広 先生
九州共立大学 経済学部准教授・経済経営学科スポーツビジネスコース主任・サッカー部部長、一般社団法人全日本コンディショニングコーチ協会代表理事、一般社団法人日本メンタルトレーナー協会理事、九州大学非常勤講師(健康・スポーツ科学)、財団法人福岡県スポーツ振興公社スポーツアドバイザー、株式会社GET専務取締役、アイ・エム・ビー株式会社取締役、森部塾塾長