コンディションを保つことは持てる力を発揮する上で必要不可欠な取り組みです。もちろん、いま以上に成長し、高度なパフォーマンスを発揮するためにもコンディショニングは重要になってきます。今回は運動・栄養・休養にプラスαを加えた自分の限界を突破するためのコンディショニング論を解説したいと思います。



コンディショニングとは?

競技選手の能力を高めるためには、コンディショニングが非常に重要になってきます。

コンディショニングには3つの要素があり、運動・栄養・休養です。これにプラスαというものを加えて、私(森部先生)は指導をしています。

より高みを目指すためのカギになってくるものとは何なのかというと、強い体、そしてその強い体が出すことのできる高い運動能力というのが当然必要になってきます。

その体を作ったり、動きを作っているものの中に栄養という要素がありますが、それもどのようにして使われているかということに関して当然理解をしていかなければいけません。そして、強い体を作るためには当然回復に必要な休養が必要になってくるということはお分かりになると思います。

下の写真は、私(森部先生)があるテレビのプロジェクトで元プロ野球選手・ソフトバンクホークスの柴原選手に指導(引退後の始球式イベントに際して)をしているところですが、いまからピッチングのパフォーマンスを発揮する前に体がよく動くようにするためのストレッチと動きの改善のための体操を指導しています。

ピッチング動作のコンディショニング

さらに下の写真は私どもの施設の方で毎年恒例で年末に合宿をしているのですが、野球や柔道、サッカーの選手が集まりまして高校進学や大学進学をスポーツで狙っている人たちのための合宿です。そこではコンディショニングについて運動・休養・栄養、そしてプラスαの4つの側面からいろいろな指導を行っています。

スポーツ合宿

コンディショニングの3要素

まずは3要素についてお話ししたいと思います。

繰り返しになりますが、運動・栄養・休養というものがあります。

運動

運動の中で特に注意をしなければいけないのは、競技選手の場合は専門的な技術を伴う専門練習というものがあります。それから専門的な技術を高いステージで強力なライバルたちと戦いながら、自分のパフォーマンスをできるだけ有利に展開してくための体を作るためのトレーニングが必要になります。

専門的な練習、補強としてのトレーニング、これは部活動の中ではわりと一緒に行われていますが、全く意味が違います(分けて考える必要がある)。

練習とトレーニングは、イコールではありません。これを間違えるとオーバーワークに陥ってしまったりしますし、間違ったトレーニングというものが普通に日常の中で行われて怪我を引き起こしてしまいやすくしてしまうという問題が出てきます。

専門的な練習は、どういった特徴があるかというと、反復練習によって合理的な動きを獲得していきます。自分の一番いいパフォーマンスが発揮できるように、また、どんな状況からでも自分のパフォーマンスを発揮できるように体に動きを覚え込ませるために、繰り返し繰り返し反復していく必要があります。

ところが洗練されてくると繰り返し反復して再現性が高くなってくると余計な力を使わなくても、そのパフォーマンスを発揮できるようになりますので、時間が長くても対応ができるようになります。

これは非常に大きな特徴です。上手になればなるほどエネルギーなど余計なものは使わなくて済むということになるわけです。

ところが、補強トレーニング(筋トレなど)は慣れてきたら負荷をかける、楽になってきたらまた負荷を上げる、そうすることによって漸増的に負荷を高めていくことになりますので、(トレーニング中は)いつもきつい状態がずっと続くことになります。

●専門練習は、慣れれば楽になる。だから長くやることができる。

●トレーニングは、慣れたら負荷が上がる。だから長くはできない。

このような特徴がありますので、運動は必要なんだけれども、どういう運動をするのかということをしっかり理解しておかないと大変なことになってしまいますので注意をして下さい。

栄養

栄養に関しては、通常の食事が何よりも重要です。その次に足りない栄養素を補充するためのサプリメントです。

これらを両方併用して最大の効果を出すことが競技スポーツの選手には求められてきます。

休養

休養に関しては睡眠が一番重要です。長さの問題、そしてタイミングの問題、それから深さの問題があります。非常に重要なので奥の深いテーマになりますが、よく考える必要があります。

それからハードなトレーニングや練習を繰り返すことによって、体の中に知らず知らずのうちに蓄積されていってしまう疲労。この疲労を効率よく回復に導くためには体のメンテナンス、こういったものが重要になってきます。

コンディショニングの実際

下の写真は、専門練習ではなくフィジカルトレーニングとして行っています。行っている彼は陸上競技の選手です。

少年陸上選手のフィジカルトレーニング

小学5年生の時から私のところにトレーニングに来ていましたが、現在高校一年生で100mは10秒9台でいま走っています。

もっともともっと伸びると思いますし、体もまだ大きくなっていますので楽しみにしていますが、専門練習とわりと相関の高いフィジカルトレーニングを行っています。写真は、腕立て姿勢の状態でできるだけ早く脚を交互に入れ替えるというスピード・レッグスプリットとという種目をやっているところです。

あるいは、短距離選手なので体幹部も含めて、非常に激しく腕を振らなければいけなかったりします。そうしますと上肢の強さが必要になりますので、例えばウエイトトレーニングを行う場合があります。もちろん、ウエイトトレーニングも正しい運動の可動域を理解したうえで行ってもらっています。

このようなハードなことをやっていくと、どうしても体の中にはいろいろなところに見えない負担が疲労として蓄積されて痛みとして出たり、動きの不自然さとなって現れたりする問題が出てきます。

それで体をしっかりほぐしてあげるメンテナンスを行うわけです。

体のメンテナンス

その上で疲労を取って、質の高い睡眠をとることが非常に重要になってきます。

このようなことを計画的、習慣的に行いながら年間計画、それから短期計画、いろいろなことを組み合わせていき、一年を期分けしながら、この時期には体づくり、この時期には動き改善、この時期にはパワーアップなど、いろいろなテーマに従ってコンディショニングを整えていくことが非常に大切になってくるのです。

コンディショニング+α

最後にプラスαの部分についてお話しします。

ここには、心(メンタル)の問題が入ってきます。

下の図は、肉体的限界と心理的限界を示す模式的な図です。

肉体的限界と心理的限界

あまりトレーニングをやっていない人のパフォーマンスがどこで決まっているのか、発揮しているパフォーマンスを黄色で示しています。

そして、その人が持っている身体的な能力をフルに発揮できたとすると、ここまで行くだろうというものを赤で示しています。

そうしますと、自分の体がどうなってもいいというくらい限界の状態までやったときに、ここまで出せるだろうというところでも、実はいろいろなレベルでストッパーがかかって、能力は実際にはもっと低いところでしか発揮できていません。

この限界を作っているものが、心理的限界というふうに考えられています。メンタルブロックがかかってしまうわけですね。

体が壊れないようにするためにセーブをするという部分もありますが、もう一つは苦手意識が出てしまったり、初めてのシチュエーションだからどうやっていいか分からないという戸惑いがあったり、こういったところでブロックがかかってしまうわけです。

ところが、このままでは上のレベルには行けませんので、上のレベルに行くために通常は体を発達させて、体そのものを大きくすることによって同じ比率でブロックがかかったとしても、結果としてパフォーマンスは上乗せになっているというようなことを通常は狙うわけです。

それで毎日ハードに練習する以外にハードなトレーニングを体力に応じて導入していきながら体を作っていくことが必要になっていきます。

ところが、同じようにトレーニングをして練習に取り組んで舞台を踏んで、そして全国大会の決勝で戦うようなチームや選手の場合を見てみると体のサイズはそう変わらなかったりします。

同じ体のサイズ、同じ競技経験年数を持っていながら、同じような優れた指導者に教えを受けながら、やはりパフォーマンスとしては差が出てしまう。

この差を生んでいるものは何かということですが、もちろん経験の豊富さだとか、あるいは高度な戦術の理解だとかに差があるかも知れませんが、仮にそれを同じレベルにあるというふうに想定した時、この差を生んでいるものが実はなんですね。

これは色々な研究者の方々が全国大会に出場するベスト8以上くらいで戦っている多くの競技選手に対して行った質問肢によって得られたデータもあります。

そうするとやはり優勝しているチームの選手とそうではない準優勝以下の選手とでは心の持ち方、メンタルタフネスという部分について明らかな差があるということが分かっています。

従いまして、肉体的限界を高めるためのフィジカルトレーニングというものは当然重視して行わなければいけませんし、そのために必要な栄養や休養についても計画的に取り組む必要がありますが、さらにその上を狙う、本当の意味での超一流を目指すためには心理的限界を高めるためのアプローチが必要になってくることを理解しておきましょう。

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