腹筋を強化して割りたい、引き締めてぽっこりお腹を解消したい、そのような目標を持っていても腹筋トレーニングがうまくできずに挫折してしまっては永遠に目標を達成することはできません。そこで、運動経験のない初心者が無理なく筋トレを進められる段階的トレーニング法をここではご紹介します。種目は最もポピュラーな腹筋種目「クランチ」。正しい方法をマスターして目標を実現して下さい。



腹筋群を鍛える目的

お腹周りの筋肉を効率よく鍛えるための段階を負ったトレーニングの進め方を説明します。

お腹周り、よく腹筋群と言われますが、腹筋群をトレーニングする目的は大きく分けて3つあると考えられます。

あまり筋トレをやったことが無いような方にとっては、例えば(1)腰痛の予防や改善、それから少し意識が高い方で自分の体づくりをやろうというような方の場合は、(2)ボディメイクのために引き締まったウエストを作る、スポーツをやるような体力ある方の場合は、自分の(3)専門競技に役に立つような体幹部の強化やパフォーマンスを向上させることを目的として行う。

こういった事で、段階を追って体幹部のトレーニングは行われています。

その中でもよく行われる床の上に寝た状態で行う筋トレのバリエーションを説明していきたいと思います。

無理なく続けられる腹筋トレーニングのステップアップ法

まずは骨格を正す筋トレから始めてみよう

まずは仰向けに寝転がって、自分の体の骨格(アライメント)に癖が無いかを確認していきます。

仰向けに寝た状態で脱力した時に、通常健全な状態で脱力ができれば腰の隙間はほぼなくなってきます。

ところが、反り腰の方や体幹部が必要以上に緊張しているような方の場合でリラックスしているのに腰に隙間がある方は、クランチシットアップ系の筋トレをすると腰を痛めてしまうケースが出てきます。

こういったところを改善するためには、まず自分の筋力によって不足している柔軟性を補うような強さが必要になります。

具体的には、腰に隙間が空くような方の場合で、力を抜いても隙間があまり改善されない場合、そのような場合には、(逆に)お腹に力を入れて背骨を床に押し付けるようにします。

脱力した状態からお腹にグッと力を入れて背骨を少し床に近づけるんですね。この状態を保持します。ほぼアイソメトリックのような状態でのトレーニングになります。

お腹に力を入れて、硬くなったのを確認しながら一定の時間このままキープし続けます。

運動中(キープ中)に隙間が空いてはいけません。閉じたままの状態でずっと収縮を続けます。

この運動ができるようになってきたら、「お腹に力を入れて隙間を無くす、そして緩める」形で背骨の動きを作っていくような運動もウォームアップとしても有効になりますので、ぜひ行ってみて下さい。

この状態から徐々に上半身を起こしていくクランチやシットアップ系統の筋トレを段階を追って進めていきます。

クランチの方法~第一ステップ~

安全面を確保するために膝を曲げて腰の隙間を無くした状態でトレーニングします。手のひらは太ももの上に置きます。

あごを引いて、頭を持ち上げて、肩甲骨を少し浮かしたところがスタートとなります。

このようにすることによって、この時点でお腹の筋肉はある程度緊張しています。そこからさらに筋肉の収縮度を高めていきます。

上背部を持ち上げて、ゆっくり下ろします。

一番きつい運動というのは、上げて止めたままにするアイソメトリックの状態ですが非常に運動強度が高いので、慣れるまでは稼働させることでトレーニングを行うようにします。

連続した動きをゆっくりと繰り返していくというのが、一つポイントになります。

よく連続動作で反動を使って行う方もいますが、このような場合は筋肉の収縮はあまり高くなっていなく、動き始めの一瞬と動作を切り返す時、つまり下ろしていく直前の一瞬だけが筋肉が縮んだ状態で、あとは緩んだ状態になります。

したがって、30回、50回など反復回数が増えれば増えるほど、それだけの回数緩んでいると同じことになりますので、腹筋群を強化するためにはできるだけ縮んで固くなった状態の持続時間を長くしていくことが大切になります。

これまでバネを使った弾性的なエネルギーで筋トレをしていた方はほんのちょっとで構いませんので、スピードをコントロールしながら筋肉の緊張が抜けないように反復してみて下さい。

目線は、おへそを見た状態でしっかりとお腹を縮めて下さい。

そして、下ろしたときにあまり腹筋群が緩まないようにします。寝た状態の時間が長くなれば体幹は緩んでいますので、なるだけ縮めた状態で持続時間を長くしていきます。

このような小さな動きが第一ステップになります。

クランチの方法~第二ステップ~

脚を床に着けていた状態、これを宙に浮かせて膝関節を90度に曲げた状態を作っていきます。

脚が床から浮くことによって腹筋群の下部の部分、下腹が緊張した状態でアイソメトリックなトレーニングが行われています。そこに上半身の動きを加えることによって、より強い筋肉への刺激を与えることができます。

スタートの姿勢は上半身は第一ステップと同じです。そこから脚を床から浮かせて、足首、それから膝関節、どちらも90度で固定します。

よく太ももを90度のポジションよりも上体側に寄せてしまって運動(膝を上体側に引き付ける動き)する人がいますが、これはあまりいい方法ではありません。

基本的に太ももは床に対して90度のところ、ここでキープして下さい。その状態で上半身を上げていきます。

最初の段階では、手は頭のうしろではなく肩の前で組むようにして、少し首を楽にしてあげて下さい。

そこから両肘を太ももにつけるイメージで動かしていきます。

この動きの中ではスピードを付けた瞬発力のトレーニングにはなっていないことが分かったかと思います。勢いを付けて行うと可動域を見かけ上広げることができますが、スピードに筋肉の収縮が付いていけなくて結果的に筋肉が緩んでしまうことになってしまいます。

あくまで今回のトレーニングで強化したい部分は、お腹周りの筋肉を固く収縮させることによって、腹筋を引き締めたり、強度を高めていくところになりますので、あまり瞬発力を使ったトレーニングは望ましくありません。

動くときに瞬発力を使ってダイナミックに動くと、もの凄く上半身が動いているので、いかにもトレーニングをしているという錯覚に陥ってしまいます。実際にはあまりお腹には効いていません。

このようなやり方ではなくスピードをコントロールし、お腹の力だけを使ってゆっくりと動作させるようにします。

この方法では可動域は小さいですが、お腹が脱力していない状態で動き続ける、これを一つの目標として進めていって下さい。

反復回数は少しずつ増やして、持久的にトレーニングをやっていった方がお腹には効いてきます。

どうしても反復回数をこなすことに時間的な余裕がない方の場合は、頭のうしろや胸の前におもりを持ってトレーニングするということは有効な筋トレ法となります。

ただし、この場合は足が宙に浮いた状態で固定されていませんので、上体が重くなればなるほど脚のブレが大きくなってしまいます。この部分は少し注意して行って下さい。

クランチの強度を上げるバリエーション

強度を上げるバリエーションとしては、手を置く位置を変えることによって運動の強度が変わります。

例えば、肩の前で組んでいたものを頭のうしろに置くことによって上が少し重くなりますので筋トレの負荷が上がります。この場合もトレーニング中の目線はおへそに置くようにします。

これよりも楽になってきた場合には、水泳のバックの選手が行う頭のうしろに手を組んだ状態で行います。こうすることで長さが出る分だけ、さらに上半身が重くなり負荷が増します

このように自分の体や長さを使うことによって筋トレの負荷を段階的に上げることができます。自宅などで最小限のスペースがあれば十分に腹筋をトレーニングすることができますので、ぜひやってみて下さい。

筋トレTV 出演・動画監修 森部昌広 先生
九州共立大学 経済学部准教授・経済経営学科スポーツビジネスコース主任・サッカー部部長、一般社団法人全日本コンディショニングコーチ協会代表理事、一般社団法人日本メンタルトレーナー協会理事、九州大学非常勤講師(健康・スポーツ科学)、財団法人福岡県スポーツ振興公社スポーツアドバイザー、株式会社GET専務取締役、アイ・エム・ビー株式会社取締役、森部塾塾長